正対することが最優先だと思っている

以前、『 コントロール 』 に関することと、『 敵をいなすコントロール 』 について書き、次のとおりまとめた。

【 コントロールとは 】
・左右どちらにも、早く速く蹴れる場所に止める
・パス・シュート・ドリブルどれにでも対応出来る場所に止める
【 コントロールが重要な理由 】
正対する相手に距離をとらせ、時間・距離・選択肢の余裕を作ることが出来る
【 敵をいなすコントロールとは 】
・敵と駆け引きし、敵がボールを奪いにくる場所とは ” 違う場所 ” へのコントロール
 
では、いつ正対する場所へ置き、いつ駆け引きして違う場所へ置くのか。つまり、いつ駆け引きをするのか?これは、相手との距離感で決まる。ざっくり言えば次の通り。
 
・相手が飛び込んでくる  ⇒ 駆け引きし、違う場所へ
・相手が飛び込んでこない ⇒ 正対し、相手を止める
 
 
この ” 正対 ” と ” 駆け引き ” に関することで、5年生のトレーニングを見学していたとき気になったプレーがありAコーチに話した。実は、昨日の日本代表戦でも同じようなシーンがあった。その時感じたことを、細かく整理しておこうと思う。

まずは、トレーニングで気になったシーン。メニューは、4vs4+GKのシュートゲーム。オフェンスはゴールを強く意識すること、ディフェンスはゴールを奪われないこと。どちらかといえば、気持ちを高めるトレーニングのようだった(この後、強豪チームとのTRMだったので ” 心 ” を作っていたんだと思う)。
 
そこで、下図のようなシーンがあった。
 

1)左サイドの選手に、赤い矢印の向きでボールが入った
2)対面する敵は、トラップの瞬間を狙うことが出来ない距離にいた
 
この時、どこにコントロールするべきか?という話。
 
対象選手は、2の方( 内側 )へコントロールをした。その後、真ん中の選手へパスをした。
 
この時僕は、 1の方( 正対側 )へコントロールするほうがいい とAコーチに伝えた。つまり、正対したほうが良いと思ったのだ。1vs1の状況で正対するメリットは、相手に距離をとらせ、時間・距離・選択肢の余裕を作ることが出来ること。さらにメリットがあるが、それは後ほど。
 
まずは、なぜ正対しない選択は良くないと思ったかをまとめてみる。僕は、2の方へコントロールすること、つまり相手に対して横を向くことに、リスクがあると考えたからである。
 
自分が敵1であるとして考えると分かりやすい。

もし、攻撃者が正面を向いてコントロールしたら飛び込まない。飛び込むと簡単に交わされ、自分の裏を取られる危険が高いから。しかし、横向きや後ろ向きにコントロールしたら一気にプレッシャーをかけると思う。

実はこれ、守備者のセオリーとして決まっていることである。

 守備者の優先度1:パスカット
 守備者の優先度2:トラップミス(トラップの瞬間)
 守備者の優先度3:自由にさせない(ディレイ)

この状況では、横向きにコントロールした攻撃者に対し、敵は1、2が無理だから、優先度3を実行する。つまり、正対していれば縦へ行かせないよう距離をとるが、横を向いているので、攻撃方向に向かせないよう一気にプレッシャーをかける。さらに、ボール保持者が向いている方( 内側 )へパスをすることは簡単に推測できる。次が読めれば、優先度1、または2を実行できる環境が整い、パスが行く先の選手になるほど苦しくなってしまう。結果、下図のとおり、敵1がボールに対してプレッシャーをかけ続け、敵2はパスカット、もしくはトラップの瞬間を狙うことが出来る。敵3、敵4も、自分の敵のところでパスカットを狙うため、ポジションを高めて攻撃側にプレッシャーを与えることが出来る。

つまり、正対( 攻撃方向 )に構えないことで、DFラインを高く取られてしまうことが分かる。
 
 
 
では正対( 攻撃方向 )にコントロールするとどうなるか。
ずばり、” ディフェンスラインを下げることができる ” 。これは、守備者の ” マークの原則 ” と、 ” トライ&カバーの原則 ” が影響するからである。
前述のとおり、敵1は攻撃を遅らせるため距離を置いて構える。敵2は、敵1が交わされたときにカバーが出来、かつ自分のマークを確認できるポジションを取ろうとする。すると必然的に、敵1よりもラインは下がる。また、敵3・4は、カバーを頭に入れつつ、自分の裏をとられないようなポジションを取ろうとする。すると下図の通りDFラインが下がってしまう。
同時に、攻撃側は前へ勝負できるスペースが出来、イマジネーションあふれる攻撃を展開できる(はず)。
 
 
 
 
次に、昨日の日本代表vsヨルダン戦の2失点目のシーンを振り返ってみる。吉田選手がぶっちぎられたやつ(2002年組がくらった同じようなシーンを思い出した…)。この失点は、高徳選手がボールを奪われたことが全て。あの位置でSBが単独でボールを失っては絶対にいけないシーンだった。そして、奪われた理由が ” 正対しなかったから ” だと僕は思っている。(確かに処理の難しい状況であり、高徳選手は駆け引きをして交わすことを選択したが…)まさに、正対しないことによるリスクが悪い結果として出た。

写真で追う。

最初ボールを止めたとき。このまま正対でコントロールすれば、最悪の結果は逃れたと思うのだが…

 
しかし、正対せず 体だけ 内側へ向けてしまった。コントロールできている状態ではないのでロングキックも出来ない。選択肢が限られ、相手にプレッシャーをかけるスキを作ってしまった。

 
そして、相手を交わそうとしたシーン。結論としては、距離・スピード・角度から、相手の逆をとるのは難しかった。ここでボールが相手に引っかかり、球際で負けた結果、追加点を奪われてしまった。

 
 
あくまで結果論。後からはどうとでも言える。しかし、最初のシーンで相手と正対していれば…もっと正対することに意識があれば…と思えてしかたない。もし正対していれば、相手が突っ込んできても交わすことは容易だったし、相手の動きを確認しながらプレーを選択することもできたはず。もし相手が止まれば、時間が作れ周りのサポートも得ることができたはず。少なくとも、あの位置でSBが背後を取られるという最悪の事態は防げたのではないかと思う。
 
もし、長友選手だったなら。彼なら正対しただろう。または、相手がプレスをかけて来たとき背中を向けただろう。相手との間にボールを置いたまま交わしはしないと思う(あくまで想像・願望です。たら・ればは反則だということも分かって書いてます)。
 
 
とても細かなことだが、僕は、この一瞬の判断・プレーの質で勝負が決まったと思っている。
 
 
プロサッカーの試合を観ていると、攻撃側の選手が正対することがとても多い。正対に注目して試合を観るととても面白い。あらゆるシーンで ” 正対 ” することのメリットが大きいということだと思う。僕は、小学生のうちから正対する意識と技術を伝えるべきだと思う。ボールをコントロールするとき、正対することを最優先にしてもいいとさえ考えている。だから、正対する意識と自信を選手達に持たせることが、育成年代の指導者達の重要な役割だとさえ思っている。コントロール・パス・ドリブル。これが出来なければ、正対する勇気は持てない。だから、基礎テクニック一覧を習得することが重要なんだ。
 
2002年組のみんな、絶対習得しよう!!

Author: tademako

4 Responses to “正対することが最優先だと思っている”

  1. ワンツー突破に必要な個人技術 - 稲毛FC(FC千葉なのはな稲毛) 2002年組 - 2013年5月15日

    […] ※参考記事:正対することが最優先だと思っている もう1つ、DF1を喰い付かせる方法として、” 背中を向ける […]

  2. コントロール 状況と判断の関係 - 稲毛FC(FC千葉なのはな稲毛) 2002年組 - 2013年5月22日

    […] このあたりのことは、過去の記事 『 正対することが最優先だと思っている 』 で書いたとおりである。 記事を抜粋する 【 […]

  3. 前を向け! ダイキ&タツキ « 稲毛FC 2002年組 - 2013年12月3日

    […]     まずは、昔書いた記事を読んで欲しい。   正対することが最優先だと思っている   気になるプレーは、まさにこの記事に書いてあるプレー。 […]

  4. 相手に向かうドリブル 向かわないドリブル « 稲毛FC 2002年組 - 2013年12月26日

    […] 最初に、この過去記事を読んでおくと、この記事内容は分かりやすい。 正対することが最優先だと思っている     では、実際にプレーから抜粋してみます。   […]